【番外編】これを恋と、よんでいいなら

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「なんで、止めんの?  どんな目に遭わされそうになってたか、本気で分かってねぇの?  ……それとも全部分かった上で、まだあんなクズみたいな男についてくつもりだった?」  両肩をグイと捕まれ、不機嫌な様子を隠す事なく聞かれた。  それに少しだけビビりながらも、ちゃんと伝えなければと思った。  だから真っ直ぐに彼を見下ろしたまま、静かな口調で答えた。 「違います!……そんな事よりもあの人に手を出したせいで、警察沙汰にでもなって、二見さんに迷惑をかけちゃうかもしれないのが嫌だったから」  驚いた様子で、息を飲む二見さん。  そのやり取りをそれまでおとなしく見ていた西園寺さんが、呆れ顔で笑って言った。 「そろそろ俺は、陸斗くんの待つ愛の巣に帰るよ。  だからちゃんと一度、ふたりで話せば?」  この人なりに、気遣ってくれているのだろう。  二見さんはフゥと小さく息を吐き、ネクタイを緩めた。 「……ホントお前、いちいちキモいな。  けどまぁ、いいや。あんがと。  ちょっと、冷静になるわ」  これまでのTHE 主従関係といったイメージとは、まるで異なる会話。  それに驚き、軽く引いていたら、西園寺さんはニヤリと形の良い口元を歪めた。 「これが二見の、素だから。  性格悪いし、口も悪いし、意地も悪いから逃げるなら今のうちだよ?」 「へ……?」  その言葉の意味が分からず、首を傾げた。 「うるせぇ、海晴。お前マジで、もう黙ってろよ!」  早口でそう言うと、二見さんが西園寺さんのケツを蹴り上げた。  そしてそれから何事もなかったかのように、いつもみたいににっこりと穏やかに微笑んで告げた。 「明日の仕事は、幸いリモートですべて事足りそうです。  なので朝、お迎えには上がりません。  車はそのまま、海晴さんが乗って帰って下さい。  それと私は明日有給を頂きますので、よろしくお願いします」
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