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これは、まさか……からかわれた!?
あまりにも予想外な彼の行動に戸惑い、その意味が分からず反応が少し遅れてしまったが、ようやく状況を理解した。
彼みたいな大人の男性には、男相手のキスなんてモノすらも、取るに足らない些細な事だったのだろう。
じゃなきゃあんな真似、俺に対してするはずがない。
あまりにも酷いその奪われ方に腹が立ち、キッと彼の顔を睨んだ。
だけどこんな反応もまた子供っぽいと思われるだけかもしれないと考え直し、いつもみたいにヘラヘラと笑って言ってやった。
「酷いっすよ、二見さん。
……いまの、俺のファーストキスなのに」
この人が、困れば良いと思った。
なのに彼は一瞬真顔になり、それから満面の笑みを浮かべて言ったのだ。
「マジか。ごめん!
……でも、スゲェ嬉しいかも」
それはいったい、どういう意味なんだろう?
……額面通りに受け取ると、二見さんも俺に好意を抱いてくれているように思えるんだけど。
困惑が、まんま顔に出てしまっていたのだろう。
彼はクスリと笑い、俺の腰に腕を回したかと思うと、そのまま再びキスで俺の唇を塞いだ。
だけど今度はさっきみたいな軽いモノではなく、舌がヌルって口内に割り入って来て……完全にまたパニック状態に陥ってしまった俺は、されるがままそのキスに翻弄された。
どのぐらいの時間、そうしていたのだろう?
ようやく唇が離れたかと思うと、彼は俺の唇をふにふにと指で悪戯しながら、ニッと妖艶に笑った。
「そういう顔、俺以外に見せるのは禁止ね?」
楽しそうに、俺の耳元で甘く囁く二見さん。
その言葉の意味がよく分からず、呆然としながらただ聞いた。
「なんで……?」
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