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「……いつから始まったんだ?」 「……は、半年くらい前……」 「もう瑞穂はこれがDVだってことに気付いてるよな?」  それに対して頷くことが出来なかった。だって私がちゃんとしていたら、あの人は暴力を振るったりしないでしょ?  目を伏せた瑞穂を見ながら、恵介は小さく息を吐く。 「じゃあ質問を変えるよ。どこかに相談はした?」 「……一度だけ……。だから……一応証拠だけは残してある……」 「いいね、上出来だ。その時にシェルターの話は聞いた?」  シェルターとは一時的に保護をしてくれる施設で、相談した時にもそこへ入ることを勧められた。  でもずっと暴力を振るわれるわけじゃないし、優しい時だってある。だから一時的な感情でシェルターに入れば、彼をもっと怒らせてしまう気がして、自然と選択肢からは除外された。 「別に大丈夫よ……きっとあの人も疲れてるだけなの……。ほら、私みたいな人間は一人じゃ何も出来ないし、あの人も私の支えを必要としているし……それに……」  言い訳を探していたが、突然恵介に抱き上げられる。 「もういい。少し黙って」 「えっ……」  恵介は瑞穂を抱いたまま家の戸締りを始める。それから外に出ると、玄関の外に待たせていたらしいタクシーに乗り込む。 「ロイヤルホテルまで」 「ちょ……どういうこと? ロイヤルホテルって……ダメよ……私帰らないと……」  しかし恵介は返事はせずに、瑞穂を座席に座らせた。何も出来ないままタクシーが発車し、瑞穂は不安感に押し潰されそうになる。  だがその途端、恵介に手を握られる。息が止まるかと思った。たったそれだけのことで昔の恋心が再燃したように、胸が熱くなるような感覚に陥った。
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