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いつもの様に賑わう店内、人混みを拭うようにトレーに乗せた出来立ての惣菜を並べている。
「宮野さん、次お弁当に回ってくれない?間に合わない!」
「はい!」
毎日変わりなく過ぎる時間。
そんな私に1通のメールが届いた。
―――友梨奈、久しぶり。元気に過ごしてますか?俺今度親父の会社を引き継ぐ事になったんだ。忙しくなる前に1回会って昔を懐かしみながら食事でもしないか―――
12年前、大学時代の彼氏、西寺洸一から卒業式の日に言われた言葉が甦る。
「友梨奈、これからは住む世界が違う。だから友梨奈とはいつか別れなければならなくなる。だから卒業を機に別れようと思うんだ」
住む世界が違う……。
それはわかっていた。
涙が出そうで上を向いて空を見た。膨らみかけた桜の蕾が邪魔してた。その風景が鮮明に蘇った。
メールの返事をした。
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