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「だから蛇の尻尾にバッタをくくりつけるの無理だって前にやった時にわかったじゃん」
「ビビるなって、それに今回は秘密兵器がある」
と金髪の男の子はジャージのポケットからセロテープを出した。
「そこまでする事?」
「自分の尻尾を追いかける蛇見て見たいだろ!それに蛇がバッタを喰えたらウロボロスの完成だぞ」
「だからそれの目的がいまいちわからないよ。まあいいや。次の作戦実行員の決め方は前みたいにアイスの早食いだからね」
「わかったわかった」
「あたしは嫌よ。アイスの早食いもかけっこも。どうせならもっと頭を使うゲームで決めない?」
「馬鹿だなぁ。そんなのつまんないじゃん」
「馬鹿はどっちよ」
その会話を見ているだけで何故か私まで楽しくなっていた。
個性的ではあるけど間違いなくみんなが楽しそうで、名前も知らない子達なのに6人の間からは友情と言うものが確かに感じられた。
田中君達も6人の会話に呆気にとられたのか私をいじめる事を忘れている。
思い出したように私の方を見ると、しらけたのか田中君達は私の元から離れて行った。
「じゃあバイクとゆずは別のクラスになったけどまた放課後な」
金髪の男の子がそう言うと「おいーす」と声を合わせ男の子2人は5年1組から出て行った。
金髪の男の子が私の方に近づいて来ると隣の席に座った。
特に私に話かける素振りはなく、ランドセルから教科書を出すと机の中にそれを入れていく。
今日は授業はないはずだけど男の子の引き出しはすでにノートや教科書でびっしりだった。
「これでよし」と頷くと一息ついたように窓の外を眺めだし、その目は何かをなぞるようにゆっくりと私の顔に止まった。
「あっ、昨日の」
その子は私と目が合うと昨日の事を思い出した様に口を開いた。
「ああ、そう言えばこれ言っちゃダメなんだったよな。お前名前は?」
こんな風に話しかけられた事が無かった私は驚きと戸惑いですぐ自己紹介する事ができなかった。
「おいおい、名前を教えてくれなきゃ俺までゾンビ女なんてネーミングセンスゼロのあだ名で呼ぶはめになっちゃうだろ」
「か、河合。河合正子」
「河合か。俺は友輝。まあ隣の席になったのも何かの縁だ。1年間よろしくな」
「うん…よろしく」
同級生と普通に話す事なんて、とんとしてなかったものだから上手に受け答えができず、すぐ会話は終わった。
友輝と名乗った男の子は少し困った表情を浮かべると、自分のグループの方に行きまた楽しそうに話しだした。
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