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みんなが帰り支度をしている時に田中君のグループが私の机の前に立った。 「おい、なんだよさっきの自己紹介」 「お前があんな声出せるとは思わなかったから驚いちゃったぜ」 「おい、もう一回さっきみたいに大声だしてみろよ」 さっきどうやってあんなに声を出せたのか、私がわかってないのだから、やれと言われてもやりようがない。 私は何も言えず俯いていた。 「おい、やれよ!さっきできたんだからできるだろ!俺達の命令が聞けないのかゾンビ女」 1人の男の子が私の髪の毛を引っ張った時だった 「いや、普通に隣で大声出されたら俺が迷惑なんだけど」 隣の友輝君が空っぽのランドセルを背負いながらそう言った。 「あと、そのあだ名つけたのお前?センスなさすぎだろ。たまにあるよなぁ教師とかにも幼稚なあだ名つけて定着しちゃう事。名付け親はお前みたいな奴だったのか。納得納得」 冷やかすようにそう言うと田中君は「なんだと」と言いながら友輝君の方を向いた。 「つまんない奴と友達になる気ないから俺に話しかけてくんなよ。田中」 「言われなくても誰がお前みたいな奴と友達になるかよ!行こうぜ!」 どこか歯切れ悪そうにそう言い残すと田中君は取り巻きを連れて教室から出て行った。 私は臆病者の口をどうにか開き、めいっぱいの勇気をだして友輝君に声をかけた。 「あ、ありがとう」 私から同級生に声をかけたのは初めてかもしれない。しかし友輝君は私と目を合わせてくれる事もなく椅子から立つと 「ん?何が?」 とだけ言って廊下目指して歩き出した。 別にあれが私の為にやった事じゃなくてもいい。これから私がいじめられても今みたく守ってくれなくてもいい。無理に話しかけてくれなくてもいい。でも私をゾンビ女じゃなくて1人の同級生として扱ってくれた感謝の気持ちは絶対に伝えたい。 「さ、さわ、澤井君。私、ゾンビ女じゃないよ。話しかけくれて、ありがとう」 私の勇気の限界がきたのか、どれだけ辛いことがあっても今日まで我慢できた涙が、辛くも苦しくも全くないこの状況で溢れ出てしまった。 友輝君は後ろを振り返ると優しくはにかみ 「河合、また明日な」 と言って廊下に向かった。 廊下からは朝のように楽しく話す6人の声がする。 「じゃあ裏山に蛇探しに行こうぜ」 「山に行くとか絶対嫌」 「マムシには気をつけろよ」 田中君達のいじめから解放される期待を裏切られたにも関わらず、朝より下校してる時の方が私の気分は晴れ晴れしていて、柄にもなくスキップしていた。
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