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「こら、やめなさい」 担任の古門先生が騒ぎを聞きつけたのか男の子を私から引っ剥がした。 「田中君、あなたまた河合さんをいじめて。電話してお母さんに来てもらうからね」 「違うよ、ちょっとじゃれあってただけだよ先生。なあ河合」 いじめっ子の田中はヘラヘラしているものの目の奥で私を睨みつけた。 「うん…」 「あなたが一方的に河合さんを叩いていたように見えたけど」 「さっきまで僕がやられてたんだよ。それにこんな教科書で叩いても痛くないし」 「そう言う問題じゃないでしょ。また学級会で話合いましょう」 「ええー」 声を合わせるようにため息と不満を含んだ声が教室の中を往復した。 私も学級会で矢面に立たせるのは嫌だった。 何度話し合ってもあんな事でクラスのみんなからの嫌がらせやいじめが無くなる訳はないと思っていたし、私からの意見として何か言わないといけない事が苦痛でたまらなかった。 もっと言えば学級会で私のいじめについて話し合うのは逆効果だし、これ以上私に注目が集まる事はしたくなかった。 でもこんな思いをするのもあと少しで終わる。 何故ならあと1週間で春休みに入り、新学期にはクラス変えがあるからだ。 先生が今の状況を他の先生に説明してくれれば田中君や私をいじめる子達とは別のクラスにしてくれるだろうし、友達はできなくても、辛い思いもせずひっそりと残りの小学生生活を終える事ができる。そう思っていた。
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