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「なんだよ。お前ら全員で俺の口にそれねじ込むのかよ」
気丈に振る舞っているように見えるが若干動揺したような口調で田中君は修平君を睨んだ。
「いや、俺はお前らとは違うんだよ。一対大勢なんてダサい事しねえよ。俺は何もやられちゃいないしな。やられたのはバイクとそこの子だからな。そいつらに聞けよ」
田中君は私とバイクの方に振り返る。
「別に筋トレだったと思えば腹も立たないし、こんな奴に仕返ししたいなんて思わないよ」
バイクはハニカムようにそう言った。
「わ、私も…特に何かされた訳じゃないし」
「だってよ。優しい奴らで良かったな。ほら消えろよ」
修平君はそう言いながら田中君の背中を押してトイレから追い出した。
田中君がトイレから出る際、孝徳君が田中君のお尻を1回蹴る。
「これは俺を校庭のこんな端っこまで走らした交通費だ」
田中君は孝徳君を睨み、そのあと順にトイレの中にいる私達も睨んだ。
「覚えとけよ」
そう言い残し田中君は校舎の方に歩いて行った。
「いやあ、修平、孝徳助かったよ。実はもう限界ギリギリで腕を上げるのも無理だったんだ」
「2人とも、あ、ありがとう、バイクも私の為に本当にありがとう」
勿論、助けに来てくれた2人にもありがたい気持ちで沢山だが、私がはたかれない為にあんなに頑張ってくれたバイクに感謝の念が耐えない。
「いいよいいよ。僕も女の子が叩かれるところを見る方が腕立てするより気分悪いしね」
やっぱりバイクはとびきり優しい。
それに加えて私を女の子扱いしてくれるのは嘘でも嬉しかった。
「今回は僕も被害者で腕立て伏せは僕の自己満足の為だったけど、変わるきっかけは自分で探さないといけないよ」
そういうとバイクは掃除する体力なんてもうないと言ってサボっちゃおと提案した。
ここで私1人でするから帰っていいよと言えばバイクも結局一緒にしてくれる事になるだろう。
私は初めて先生の言いつけを破った。
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