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「あら、どうしたの。さっきに比べると顔が曇ってるように見えるけど」 そんな表情はお首にも出していないつもりだったが病室に入るや否やお母さんにそう言われたもんだから私はすぐさま笑顔を貼り付けた。 「気のせいだよ!全然そんな事ないよ!もしかすると買う飴を悩んじゃったからあっちにしとけば良かったなあとか思ってたかも」 「そう、それならいいんだけど」 そう言ったきりお母さんがその事について私に何か聞いて来る事はなかった。 全部と言っていいほど嘘で作られた私の学校生活をお母さんに笑顔で話した。 お母さんも笑顔で私の話を聞いてくれる。 面会時間は終わり、私は最後まで笑顔を貼り付け病室を出た 「バイバイ」と手を振ると、お母さんはヒラヒラとまるで力のこもってない右手を振った。 帰り道、お母さんについた嘘を数えながら自分で買ったお菓子を食べた。 値段もそこそこしたし美味しいはずなのにお菓子の味はまるでわからなかった。 「家に着いたらすぐお風呂に入らなきゃ。今にも涙がこぼれそうだから」 私はそう呟くと汚く見えた西日を見上げ一生懸命涙を堪えた。
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