魔法少女の死に方

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「痛いな! 僕だってこれでも命ある生き物なんだよ!?」 「私だってそうだよ、命ある人間だ! あんたに殺されるぐらいなら私は自分で死ぬ」  まだ残っている魔法少女の力で、目の前のフェンスを焼き、人が一人通れるぐらいの穴を開けた。 「やめたほうがいい、魔法少女が自分で死ぬとこの世にはなにも残らなくなる。君が生きていた痕跡すべて消えるんだ。僕に殺されたら、君はただの人間に戻れる」  先程まで卑しい笑みを浮かべていたルイウが冷静にそう話す。だが、自分は人殺しだ。魔法少女という力を使った、完全犯罪の人殺し。それに、私が望んでいた世界に変えることはできなかった。 「もとより、死のうとしていた命だ。私が消えたほうがきっと、世界は平和だったんだよ。私が頑張って消してきた人の殺意はそのままのほうが良かったんだ」  ルイウと正面から向き合ったまま、一歩ずつ後ろへ下がっていく。  そうだ。殺意なんか消さなくても、そのままにしておけば良かったんだ。殺人事件がたくさん起きたのかもしれない。でも、私がやったのはその事件をひたすら先延ばしにするだけ。それなら、始めっからなにもしなければ良かったんだ。 「誰かの役に立てたなんて、思ってない。でも、私がいないほうが良かったってずっと思ってる」  最後の一歩を空へ踏み出す。背中から感じる空気抵抗。そっと目を閉じる。世間一般的にはきっと短い人生だったのだろう。それでも、私にとっては地獄のような長い長い、苦しいだけの人生でした。
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