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「魔法少女になって初めてやることが人殺しかい?」
「どのみち、悪人倒したって人殺しでしょ」
通常の状態に戻った私は自室でベッドに寝転がっていた。そいつは窓をノックしてきたため、開けようとしたが、幽霊のように通り抜けてきた。ついでのようにそいつの名前を訊くと、ルイウだと名乗った。
「そもそも悪人倒すってなにすんの。目に見えるわけ? 試しに飛び降りたけど私って無敵なの?」
「質問が多いね。まず悪人は目に見えるよ。悪意に満ち溢れた人間の周囲には黒いモヤが現れるんだ。小さなモヤなら放置しても構わないが、それが全身を包んだ瞬間、そいつは魔法の力で浄化してやらなきゃいけなくなる。一時的に意識不明にはなるけど、殺しはしないよ」
優雅にふわふわと宙を舞いながらルイウは淡々と説明していく。
「そして、最後の質問だけど君はほぼ無敵だよ。怪我したって深呼吸一つで治ってしまうし、空だって飛べる。力だって通常の十倍以上だ」
「でも、魔法で浄化するだけならそれだけのパワーいらないんじゃないの?」
「残念だけど、モヤに包まれた人間は悪意の塊なんだ。戦闘で弱らせてからじゃないと浄化は効かないんだ」
なるほどねと、つぶやいて天井を仰ぐ。私をいじめてきたあいつですら、モヤの欠片もなかった。だったら、私が魔法少女としてやっていくための善人と悪人の区別ってどうやってつけるんだろう。
「まずは手始めにクラスで探すといいよ。モヤの広がるスピードは人によるけど、早い人はその日のうちに包まれちゃうから。それじゃあ、ぼくはこれで行くよ」
そう言い残すと、ルイウは再び窓から通り抜けて出ていった。一人になった途端、ぐっと身体が重たくなり、そのまま眠りについた。明日のことは明日考えればいいや。
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