魔法少女の死に方

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 いつもなら、ため息をついて鉛のように重い身体を起こして身支度をするのに、今日はとても身体が軽かった。なんなら気分だって高揚していた。私、学校に行くのを楽しみにしているんだ。鏡を見ると、僅かに口角が上がっていた。そうだ、私は無敵なんだ。なにかやられていても殺してしまえばいい。私だという証拠はどこにも残らないのなら完全犯罪だ。スキップしたくなるような軽い足取りで私は家を出た。  教室に入ると全体が険悪な空気に包まれていた。どうやら、取り巻きのあの子が殺されたことで話題は持ちきりのようだった。自分の席に座ろうとした瞬間、後ろから髪を引っ張られた。 「おい、お前だろ。今すぐついて来いよ」  主犯格と取り巻きの一人を合わせた二人が、私を睨みつけていた。髪を掴んでいる手を払い除け、もうついて行く義理ないからと言い放つと、主犯格は激高した。 「あの子を殺すのなんてあんたしかいないでしょ!」 「その証拠はあるの?」  いつもなら怯えた表情しか見せない私が強気に出ているのが不気味なのか、主犯格はなにも言えないままでいた。しばらく、無言の睨み合いをした後になにかを見つけたかのように目を見開いた。 「あんたにこんな金のチョーカーなんて似合わないわよ」  そう言って引きちぎろうと首との隙間に指を入れて引っ張られたが、ちぎれる様子は微塵もなかった。私と主犯格の距離が縮まっただけ。彼女の胸あたりを見てみるが、黒いモヤは欠片もない。こんなやつですらモヤはないのか。手首を握り、チョーカーから手を離させる。 「もう満足した?」  冷たくそう訊くと、彼女は渾身の力で私の頬を叩いた。これには流石に驚いたが、これまでの暴力と比べたらこんなのどうってことない。絶対に人目のつかないところでしかいじめてこなかったものだから、これにはクラス中の視線が私達に集まった。その時、担任の先生が教室に入ってきたため、各々自分の席へと戻った。私の席は中央列の最後尾の席だった。そこから全員を見ていると、一人だけぼやけているような、その姿にピントを合わせられないような人がいた。もしかして、あの人がモヤを持っている? そう疑ったが、ここからではしっかりと確認できなかった。  授業後、黒板を消しながらその人の胸元を確認してみると上半身を隠してしまうほどの大きさになったモヤがあった。その人はとても意外な人物で、私と同じようにスクールカートの下位にいる、みんなに学級委員長の仕事を押し付けられた人だ。名前は確か、原田だった気がする。彼も私と同じようにいじめられていたはず。今日は原田を尾行することが決まった。
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