魔法少女の死に方

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 放課後、屋上の扉の前で魔法少女に変身した私はその力でドアノブを壊した。まだ、青空が残るなかそこから原田が下校するのを待っていた。だが、いつまで待っても正門からは姿を表すことはなく、学校中を探索してみると特別棟と体育倉庫の間で暴力を振られていた。本来なら助けるべきなのだろうが、私のやるべきことは原田のモヤを浄化するだけ。今は出番じゃない。必死に相手の機嫌を損ねないようにへらへら笑っている原田を見ていると、虫唾が走った。まるで、過去の自分を見ているようだ。早く終わらないかなと思いつつ、ぼんやりと眺めていると原田のモヤが急成長した。本当に突然だ。思わず立ち上がる。原田をいじめていた人たちは満足したかのように、最後に一蹴り入れると、背を向けて笑いながら去っていった。ふらふらと立ち上がった原田は、近くに落ちていた手のひらサイズの石を握りしめ大きく振りかぶった。 「ダメっ!」  咄嗟の判断で地上まで飛び降り、後ろから原田の腕を掴んだ。 「誰だよお前! 離せよ!」  そう叫ぶと、振り返りざま、手に持った石で私の顔面を殴ろうとした。だが、その動きがスローモーションに見えた私は簡単にそれを止めることができた。そして、初めて私の顔を見た原田は眉間にしわを寄せた。 「マジでお前誰だよ。なんで学校にそんな格好してきているわけ?」  確かに傍から見れば、私の格好は浮いているだろう。白をベースとしたフリルやリボンがたくさんついた、パニエ入りのふわふわスカート。髪色だって普段は黒髪なのに返信した途端金髪に変わった。それでも正体がバレていないだけ助かる。私のやるべきことをやろう。 「ダメだよ、殺そうとしちゃ」  つい昨日の夜、人を殺した人間のセリフに聞こえないなと思いながらも私は綺麗事を並べる。 「んだよ、お前になにがわかる!」 「わかるよ。殴られる痛みも、侮辱される悔しさも、誰も助けてくれない苦しさも、死にたくなる気持ちだって、殺したくなる気持ちだって」  モヤが、全身を包む。その瞬間、衝撃波のようなものは走って思わず数歩後ろに下がった。モヤに包まれた原田は人間じゃなくなっていた。身体の大きさは数倍に膨れ上がり、目だけが赤くギラギラとした光をまとっていた。どうしよう、私は戦い方も浄化の仕方も知らない。  すると、どこからかルイウが現れた。 「れいら! 初めての戦闘だね! 僕がサポートするよ」  そう言うと、ルイウは首元にまとわりついた。 「ちょっと!? 邪魔なんだけど!」 「ここからだと僕の力も与えられるからね! 頑張って戦ってよ」
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