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ルイウの指示を受けながら力任せで戦ったが、案外どうにかなった。何度か壁に打ち付けられたりしたが、深呼吸一つで骨折も内臓破裂も治るのは本当らしく痛みを感じたのは一瞬だけだった。戦っている最中、黒いモヤはみるみるうちに色を薄くしていき、明るめの灰色になった頃に浄化の魔法を唱えた。肝心の原田は意識を失って倒れていた。ルイウにどうするかを聞いたところ、そのまま放置して構わないとのことだったので私は自室へと帰った。
「ねぇ、ああやって戦ってもなにも根本的解決にはならないよね?」
「なんでそう思うのだい?」
素っ頓狂な顔で、とぼけて返事をするその姿に少しイラッとする。
「戦う前に原田と話してて気づいた。あの黒いモヤの正体は殺意でしょ。一度は浄化したって、原田を取り巻く環境が変わらない限りきっと同じようにあいつらを殺そうとする。そうじゃない?」
「よくわかったね。でもそこは、魔法少女の管轄外だよ。魔法少女の力は浄化するだけであって、その人の思考や性格、環境を正すものじゃない。君がプライベートで彼を助けようとするのは自由だけど、魔法少女にそこまでの力はないよ」
どこか腑に落ちないまま、黙っているとルイウは窓から外へ出ていった。私は、魔法少女として殺意と戦わなければならないんだと、今日の出来事で思い知らされた。
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