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それからプライベートで原田を助けるようなことはせず、ただひたすらに彼の殺意が大きくなってしまわないように注意を払った。予想通り、小さな殺意は芽生えたようだったがそれ以上大きくなることはなかった。その間、魔法少女としてルイウに呼ばれる度に様々な殺意と戦った。
娘を殺された父親が犯人に復讐をしに行った。両親から受けた虐待に耐えきれず、寝ているすきを狙った。彼氏の浮気が許せず、ナイフを手に取った。担任から受けた性暴力に耐えきれず、階段から突き落とそうとした。
その誰もが加害者になろうとしている被害者だった。中には涙を流しながら、その選択を取ろうとした人もいた。毎度毎度、戦闘に移る前に言葉でなんとか落ち着けさせることはできないかと試した。だが、どれひとつとして上手くいくことはなく、意識を失うまで戦うしかなかった。彼らが感じている絶望感や喪失感、悲壮感、虚無感、傷心のあまりそうせざるを得なかった人たちの心がまるで自分のものかのように思えて、やるせなくなっていた。自分が並べている綺麗事がどれだけ薄汚れているのかを感じた。これじゃあ彼らを逆上させてしまう。そうわかっていながらも、彼らが求めている正解の言葉がどうしてもわからなかった。どうしようもない感情に、戦闘が終わるたび一瞬しか与えられない救いが虚しく思え「ごめんなさい」と言い残してからその場を去っていた。
自分の復讐心がとてつもなく小さなものに思えた。
今日も浄化を終えて、空を飛べることをいいことに海まで来ていた。
「わたし、魔法少女、やめたい」
きっと、どこからとなく現れるであろうルイウに向けてそう呟いた。
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