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「急にどうしたんだい」
やはり現れた。
「急じゃないよ。何度も考えてきたことなの。私、結局誰も救えてない。こんなことなら魔法少女にならなければ良かったって後悔しているぐらい。人間の殺意なんてもう見たくないの」
「君はちゃんと人を救えているよ。そこに偽りはない」
いつもと変わらない、ふわふわとした調子でルイウは答える。
「救えてなんかいない! みんな一瞬だけ楽になったかのような表情をするけど、すぐに無理矢理忘れられた殺意を思い出して、一回浄化したのにモヤがどんどん大きくなるのを見ていることしかできない! こんなの救いなんかじゃないよ。みんな、被害者だった……」
隣りにいたルイウが突然、目の前に飛んでくる。そして、真っ直ぐな目で私を見つめて話し始めた。
「じゃあ、君がいう救いというのが彼らを殺意の生まれない状態にする戻すということなら、それに対する労力がどれぐらいのものなのか、君には想像つくかい? 例えば、君が一番最初に助けた原田くんだって、彼をいじめていた人たちの性格や考え方を直さなきゃいけない。それができないなら、彼を助けようとする人間を入れなきゃいけない。彼自身に修正をしなきゃいけないかもしれない。そのすべてを君一人の魔法少女で救いきれると思うのかい?」
なにも、言えなかった。ルイウの言っていることは確かに的を射てる。だったら、私のできることはあるのか。
「そんなもの、ないよ。育ったモヤを君は繰り返し何度も何度も浄化していくだけさ」
それだったら、育った殺意をそのままにしていっそのこと殺人事件を起こしてしまったほうが当人はスッキリするのではないか。私なんかが、手を出さないほうがいいんじゃないのか。
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