4 朝咲side.

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4 朝咲side.

 彼は以前とは別人のようになった。  彼からは傲慢さが消え、笑顔溢れる優しい人へと変わっていった。  見た目も髭を剃り、筋骨隆々に変化した。  会社にも復帰してプロジェクトのエンジニアリーダーなった。  時精妖さんとも仲良くやっている様子。  その矢先に彼はまた欠勤をした。  私も心配になり連絡をしたが返事がなく、心配になり彼の家に行くことにした。  彼のベッドルームに行くと、薔薇の花の前で倒れていた。  どうしてこんなことに……。 「野薔薇さん! 野薔薇さん!」と泣き叫びながら名前を呼ぶ。  呼んでも反応はない。  何度も何度も名前を呼ぶ。  すると「さ、朝咲(さえ)?」と彼は朦朧としながらも意識を取り戻す。 「なにがあったんですか? 今、救急車を呼びますね」 「大丈夫、落ち着いて。ちょっとだけ食事制限をしていたら意識を失ってしまったんだ」 「ダメですよ、ちゃんと食べなきゃ」 「心配かけてごめんね」と彼は涙を拭ってくれ、優しく頭を撫でる。 「もうこんなことにはならないように今日からここに住みます!」 「え?」 「もう決めました!」 「それって……」 「私をアナタの妻にしてください」  アナタは驚き、顔を真っ赤しながら優しい笑顔を見せる。 「俺をキミの夫にしてください」  私たちは笑い合い、強く抱きしめあった。 「月明かりに照らされた薔薇も綺麗ですね」 「そうだね。この薔薇は特別な薔薇なんだ。この薔薇は母が好きだった花でね。“薔薇は美しいから身を守るために棘で自分自身を守っているのよ。アナタも自分自身を守り、そして将来愛する人をも守れる人になりなさい”とよく言っていた。だから運命の人が現れるまで薔薇の花を飾り続けていたんだ」 「アナタは本当に純粋で優しい人ね。そんなアナタだから私はこれからもずっとアナタのそばにいたいと思ったの」 「ありがとう、朝咲。愛しているよ」 「愛しています」  私たちは抱きしめ合い、見つめ合う。  瞳の中にお互いだけが映りだされ、そっと口唇を寄せた。  二人を祝福するかのように一枚の薔薇の花びらがヒラリと落ちていく。
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