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「今だ!」  男の声に手からクナイを抜いた男二人が私に襲い掛かった。両腕の使えない私目掛け一人目が握った拳を振り上げる。  だが私はそれが振り下ろされる前にガラ空きになった横腹へ鞭のように足を振った。脇腹を直撃した足を下げると透かさずもう片方の足で男の顔を横から蹴り飛ばす。男は壁に激突しそのまま床へずり落ちて行ったが、私は既にもう一人へ。  手から抜いたクナイを振り下ろそうとしていた男に対し、私は金的をひとつ。全力で蹴り上げると男はクナイを手放し膝から崩れ落ちた。そして顎を蹴り上げると男は体を反らせながら後ろへ倒れていった。  後ろの男をどうしようか。次にそれを考えていると壁へ蹴り飛ばした男が、銃を片手に立ち上がっていた。壁に体を預け鼻や口からは血が流れている(それなりのダメージはあるようだ)。  そしてゆっくりと銃口を私の方へ。その最中、私は顔を俯かせ――勢いをつけて後ろの男へ頭突きをお見舞いした。体を拘束する力が僅かに弱まったのを感じながら上げた足裏を男の足へ急降下。指先を踵で踏み付けると一気に力を加え男ごと体を回転させた。  丁度、私が後ろを向いたタイミングで一発二発と廊下を駆け抜ける銃声。再び静まり返ると男は私の体から離れ床へと倒れた。  一方で私はすぐさま振り返ると男の手から銃を蹴り飛ばす。そしてそのまま、と思ったが視界の端で顎を蹴り飛ばしたはずの男が力を振り絞りながら手を近くの銃へ伸ばしているのが見え、先にその男へ取り出したクナイを投げ飛ばした。  だがそっちを優先させた所為で壁に凭れかかっていた男が私へ突っ込んできたのを止める事が出来なかった。勢いに呑まれそのまま後ろへ下がる私の背は最悪な事にお坊ちゃまの寝室のドアに当たる。  そしてそのままドアを蹴破るように開け、寝室の中へ転がり込んでしまった。不幸中の幸いか私たちは勢いのあまりベッドのフットボードの陰へ隠れるように入り込んだ。更に男に覆い被さるような態勢を確保できたのも幸いだ。  私は男の口を塞ぎながら暴れないように脚を押さえ付け、喉に腕を乗せて意識を奪おうと試みる。  するとお坊ちゃまの唸るような声が聞こえたかと思うと、 「まこと?」  眠気が酷く絡み付いた声が私の名前を呼んだ。
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