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12
「お坊ちゃま。起こしてしまい大変申し訳ございません」
「何してるの?」
「いえ、その。お坊ちゃまの様子を――」
私が平然を装い説明しているというのに、抵抗する男の手がガウンの隙間から腿へと伸びてきた。
「少しばかり伺おうとしたのですが」
手は内腿へ伸びる。それ以上はやばい。そう思いながらもお坊ちゃまへの説明を続ける。
「不注意により誤って転倒してしまいて」
そしてついに男の手は私の内腿にあるクナイを発見してしまった。
仕方なく喉から腕を離しその手を遠ざけようと思ったが、一歩先にクナイを引き抜いく男の手。
「大変申し訳ございません」
「大丈夫?」
だが抵抗されながらもクナイを持った手を何とか(男の)顔の横まで持ち上げ床に押さえ付けることが出来た。
しかしクナイの刃先は真っすぐ私へ向いている。
「痛いんだったら僕が――」
「大丈夫です!」
今、お坊ちゃまが近づいて来てしまうのはまずい。私は少しばかり声を上げる事になってしまったが、それをなんとか回避しようとした。
それに喉から腕を離す際に口に加え鼻も手で覆い押さえ付けてたから、そろそろ意識が遠のくはず。
「お気遣いいただきありがとうございます。私は平気ですので、安心してお休み下さい」
「んー。じゃあ、お休み」
まだ少し気になるといった様子だったがお坊ちゃまはそのままお休みになられた。
そしてこの男も意識が遠のき始めクナイを持つ手が力を失い始める。私はその手から容易にクナイを取ると男の喉に突き立てた。
「お休みなさいませ」
顔に生暖かいモノが掛かるのを感じながらそう返した。
そして数秒じっとし、お坊ちゃまの寝息が聞こえ始めると私はそっと顔を上げ下の方からベッドを覗き込む。そこでは横を向いたお坊ちゃまがぐっすりとお休みになられていた。
「ふぅー」
何とか何事も無く全てを終えた私は安堵の溜息を零した。
だが視線を落とした後に後ろのドアを見れば今度は別の溜息が零れてまう。
「掃除しないと……」
* * * * *
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