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 そしてお坊ちゃまの方へ体を向ける。 「ではお坊ちゃま。まずはお体をお流し致しましょう」 「うん!」  それからお坊ちゃまと共に浴場へ向かうと私はその小さくも逞しいお背中をお流しさせて頂き湯舟に浸かるまでお手伝いをしたのち一度、外へ。この屋敷の湯舟は三十七~三十九度に設定されておりお坊ちゃまは約二十分浸かられる。その二十分の間に武道のある日、私は自室へ戻り汗を流す。手早く済ませ、時間が余れば夕食の準備を始める。  そして二十分経てば浴場へ行き、タオルを持ってお坊ちゃまに時間を知らせるのだ。お客様が来られる場合は黒いハーフパンツと白いシャツに伸びるサスペンダーという服装を着て頂くのだが、そうでない日は比較的ラフな格好をしてもらう(お坊ちゃまもその方が良いと仰ってたので)。  お風呂が終わるとお坊ちゃまのご希望に沿い娯楽室や図書室、寝室へお連れし私は引き続きご夕食の準備。それが済むとお坊ちゃまをお呼びしてご夕食となる。 「お坊ちゃま。お魚はもう少し綺麗に食べられるようにしましょうか」 「はーい」  お坊ちゃまはまだ骨付き魚を食べるのが苦手なようだ。どうしても散らかってします。私としてはその苦戦する姿すら微笑ましいのだが、このまま成長してしまってはいずれお客様の前で恥をかいてしまう。だから今のうちに直さなければ。 「真琴の作るご飯はいっつも美味しいくてボク大好き!」  不意にそう満面の笑みを浮かべたお坊ちゃま。私はこれから骨の付いた魚の食べ方をお教えしようとしたが、つい嬉々としながら面映さを感じてしまい今日はいいかと思ってしまった。 「そうですか……ありがとうございます。そう言っていただき、大変嬉しく思います」  もしこれが指導を避ける為のお世辞だとしたらそれはそれでお坊ちゃまの当主としての成長を感じてしまう。そうじゃないとしたらそれはそれでシンプルに嬉しい事だ。
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