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思えば、告白をしてくれたのもあの子からだし、それ以外にも何かが決まるときはあの子から。 こちら側からの話はいつでも余計なことばかりだったような気がする。
だからこそ、彼女はああして僕に背を向けて、前に向かって進んでいったわけであって。
だからこそ、彼女はああして涙を手で拭う時間も惜しんで、離れていったわけであって。
そこにはきっと——紛れもなく、声が届かなくなるくらいの「距離」ができていた。
そもそも、「最初で最後の」なんて言葉を添えて渡されたこの手紙に彼女が込めたこんなにも意図的な文章に、いくらなんでも気が付かないわけがない。
曲解するなんてこと、僕がやっていいはずがない。自分がいちばん傷ついているのに——そして、その原因は僕なのに——それでも誰かを傷つけないようにしていた彼女だからこそ、この『過去形』の持つ意味は大きかった。
空気を読んだか、敢えて読んでいないのか。
僕の頬は、唇は、どちらも乾いたままだった。
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