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<1・相性最悪!>
「全然駄目、やり直し!」
彼は相変わらず不機嫌そうな顔で、江口和紗に台本を突っ返してきた。
明らかに全部読んでいない。序盤だけパラ見、して、それだけで“面白くない”と決めてかかっている態度である。元々短気な自覚がある和紗が、ぷっつんと切れるのは必至だっただろう。
「ちょっと、何なんだよその態度!」
ぶちぶちぶち、と頭の中で筋が切れるような音がする。
「全部読みもしねえで切り捨てるってか!お前はそんなに偉いのか、ああ!?」
「全部読む前に読む気がなくなったなんだから仕方ないだろう。お前の台本は最初の段階でそれが透けてるんだよ」
「あんだと!?」
「というわけで、やり直し。どこがどう駄目なのかは、もう今まで伝えられるだけ伝えたはずだ。あとはお前次第だろ」
彼はそう言って、ひらひらと手を振って言ったのだった。
「脚本やりたいって言ったのはお前だ。いい加減、最後まで俺にまともに読ませられる台本を持ってこい。わかったな?」
彼の名前は、蒲生紡。
クラスで一番イケメンで、演劇部のエースで――とにかく最悪レベルに性格の悪い、和紗と相性最悪の少年なのだった。
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