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怪我をした防護服の少年。
背後からやって来たのは、少年と同じくらいの背丈の少女だ。彼女ももちろん、防護服を着ている。
「あっ、CB-1986番ッ! だいじょうぶ?!」
「わっ、誰かと思ったら、TM-1979じゃないか。ビックリしたなぁ!」
「いいから見せなさい!」
TM-1979と呼ばれたその少女は、CB-1986番と呼んだ少年の腕を強引に伸ばさせる。そしてポケットから粘土のようなものを取り出すと、こねて、その防護服の傷へと埋め込んだ。
「ここはホーシャノーがスゴいんだから、気を付けないと!」
「あ、ありがとうTM-1979番。」
二人は友だちだった。
「お互いに頑張りましょう、CB-1986番。」
「ゴキカブリの丸焼きが食べられるように、ね!」
がっしりと握手を交わし、別れる二人。
それから一時間もしないうちに、
━━おいおいっ、ゴミが崩れたぞ━━
━━管理者とガキが三人、飲まれちまった━━
崩れたゴミの下敷きになったTM-1979番は、そのままブルドーザーのような機械に押し潰され、おそらく挽き肉のようになったあと、溶鉱炉へと落とされた。
まるでゴミのように。
「……あぁ~、TM-1979番。死んじゃったか。TMシリーズの中じゃ良いヤツだったんだけどなぁ。」
少年CB-1986番は一度だけ騒ぎに耳を傾けたあと、またゴミあさりを再開する。
「……よっこいしょ!」
ゴミの山から引き抜いたのはノートPCだ。少年CB-1986番は楽しそうに笑う。
「やったーアンティークジャンクっ! 今日はゴキカブリのステーキだぁ!」
ノートPCは百年前の遺物。
そんなものをどうするかというと、 分解し、貴金属を採集するのだ。金、銀、銅に、レアアースを採取するのだ。パーツを分解し、半導体をジャンク屋に売るのだ。
友だちの少女TM-1979番が死んでしまったというのに、少年CB-1986番は心底思った。
「うひょー! 今日はなんて良い日なんだろうっ!」
防護服を着たままスキップで帰路につく。
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