遠く近い未来。

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 少年CB-1986番はその足でノートPCを換金した。家で防護服から私服に着替え(タンクトップと短パン)、拳二個分ほどの大きさのゴキカブリという昆虫の丸焼きを食べた。 「おーう兄ちゃん、今日は羽振りがいいねー」  エヘヘ、とテレる少年CB-1986番。 「おいおい、その腕はどうした?」 「え?」  腕を見ると、先ほどゴミの山で切ったところが真っ赤に腫れていた。  それから少年CB-1986番は家に帰った。土管で隠した廃れた下水の入り口を開け、中に入ると、そこには六畳ほどの空間があった。  彼が見つけたとびきりの場所だ。  雨風が防げるだけではなく、暖房効果や、チョロチョロとわき出る汚水は黒っぽいが飲めなくはない、と自分に言い聞かせて飲んでいる。  帰って早々、少年CB-1986番は湧き出る汚水で防護服を洗おうとした。 「……あれ?」  防護服が二着ある。  傷口からなにまでそっくりな二着。  それこそ、今日直してもらったところまでもがそっくり。 「……。」  不思議に思い、片方に触ったとき、 しゅるるるるるる!  少年CB-1986番が触れた防護服は形を変え、少年BZ-2230番と全く同じ見た目えと“模倣”する。 「なっ、なんだ?」 『なっ、なんだ?』  少年CB-1986番を模倣するので、喋ることもオウム返しのように真似する、万能の芽。 「まさか上級改装のコピーアンドロイド?」 『まさか上級改装のコピーあんろろいど?』  万能の芽は、噛んだ。 「あははー! 噛んでヤンの!」 『あははー! 噛んでヤンの!』 「真似すんなっ、このポンコツっ、前世代!」 『真似すんなっ、このポンコツっ、前世代!』 「なんなんだよもー!」 『なんなんだよもー!』  疲れてきた少年CB-1986番。  せっかくエイヨーを取ったのに疲れてしまうと思い、対応するのを止めた。 「寝る!」 『寝る!』  そこまで真似するのか、と思いながら、履いていた泥だらけの靴を枕に、布切れの布団をかけて眠る。  万能の芽はそれを模倣して、その場で寝た。
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