食べる

7/7
前へ
/7ページ
次へ
7章 鑑定 薄暗い診察室。 パソコンの画面を見ていた二人の医師は同時にため息をついた。 「ちょっとすみません」 と一人の若い医師が立ち上がった。 「気分悪くしたなら、悪かったな」 少し年配の医師が白髪混じりの頭を撫で付けた。 「いえ」 立ち上がった医師はシンクの前に行った。精神科の診察室なので、安全のため鏡は設置されていない。 「警察から精神鑑定を依頼されたんだが、どう思うね?アメリカで犯罪心理学を学んだ君の意見が聞きたくてね」 若い医師はメガネを外すと、ため息をついた。 「そうですね。僕の意見は」 そういいながら、若い医師は右目に指をあてた。 その右手の小指は第2関節から先が、無かった。 右目にあてた人差し指をグイっと下から持ち上げるようにすると、義眼が取れた。 義眼を水道で洗うと、また下瞼をあっかんべーするみたいに引き下げて、義眼を右目に嵌め込んだ。 胸ポケットから点眼を取り出し、数滴右目にさす。 「僕の意見はなぜ女の子だったのかってことです」 「ん?」 若い医師の言っていることが理解できなくて、年配の医師は聞き直した。 「僕は彼を知ってます。彼に右目を抉られ、右手の小指を切り取られたのは、僕です」 年配の医師が息を飲んだ。 「僕じゃダメだったのかそれを彼に聞きたい!……僕は、僕は彼に「食べられたかった」!」 了
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加