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「そういう所よ! 男なら女の子守ってよね! 」
「あいが僕らの中じゃ一番強かったからなぁ」
「そう言う事じゃないのよ!もう」
一度めっと顔をした後、彼女はまた目を無くした。よく笑う子なのだ。
別々の高校に通ってはいるが、こうして会っては幼い頃の思い出を語る。
それはどれもキラキラしたものばかりで、近づこうとでもしたら儚く散ってしまう砂絵の様にも思えた。
キミちゃんもヤッチもハー坊も咲ちゃんも、今僕の回りには居ない。皆どこか別の学校でそれぞれの友達と日々を重ねているのだろう。
もちろん僕にも今の友達がいる。彼らとの日々は楽しいし大切だとも感じている。
ただそれとは違うのだ。
幼い頃に共に駆け回った日々と言うものは、戻れる様で戻れない遠く切ない幻。夏の薄暗い部屋でレースのカーテン越しに見える窓の外の輝きなのだ。
夕日があいの顔に当たる。金色に輝く彼女の微笑みが眩しくて、僕は彼女の向こうにある色を変え始めた東の空を見た。
「あいはあの頃、楽しかった? 」
「うん」
ほんの少しだけ遅れた返事に思えた。今更?と戸惑ったのかもしれない。あいの顔を見ていなかったけど、何言ってるんだと言う顔だったかもしれない。
「正人はどうなのよ」
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