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04_深夜の図書館
2022年4月20日午前3時
深夜の図書館。夜間照明は薄暗く、静寂に包まれている。
……ヒタヒタヒタ
暗闇で光る猫の眼。
閉架書庫扉が開き、さきほどの縦縞の大猫ニャンゴロウが現れた。
ニャンゴロウの両耳の先には黒い房が立っている。房が歩くたびに揺れる。
何度も忍び込んでいるのか、迷うことなく一番奥の書架の前で立ち止まった。
一度用心深く辺りを見回す。続けて慣れた手つきで一番下の資料棚から一冊の古書を器用に取り出す。
肉球でページをめくり始める。ニャンゴロウは各ページを覗き込むように読む。どうやらラテン語で書かれている原書のようだ。
「……」
暫くして残念そうに首を振ると、違うラテン語の古書を取り出す。そして、肉球でページを丁寧にめくり始める。古書は三冊、四冊……十五冊と積み重なっていく。
ニャンゴロウは、あるページの挿絵で動きを止めた。
目に涙があふれている。
「……やっと、やっと見つけたにゃ……ご主人様。間違いないにゃあ」
本を棚に戻す。
ニャンゴロウは閉架書庫を出ていく。そして暗闇に消えていく。
消える際に、プッとおならが漏れる。飛び上がって振り返り、
「びっくりしたにゃ」
ニャンゴロウが読んでいた古書の挿絵は、16世紀イングランド王国エリザベス1世時代に活躍した提督の肖像画が描かれていた。
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