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県道48号線は道路幅が狭くてカーブも多いし、坂道や橋などがあって、あまりスピードは出せなかった。深夜だけあって白いクラウンのエンジン音は遠くまで鳴り響いていた。田中理沙の耳も、黒田明の運転する車のエンジン音を捕らえていた。もう、あいつが後ろから追って来たんだわ、わずかな時間が経った後にクラウンのハイビームで、県道48号線は明るく照らされた。県道から20メートルも奥に入っているので、黒田明には、発見されなかったが、田中理沙に緊張が高まった。田中理沙は杉の大木から半分だけ顔を出して、県道を確認した。爆音を出して、田中理沙の前を通過していく。やっぱり田中理沙の恐れていた、黒田明だった。楽しく過ごした、ひとときは何を残したのか?何が楽しかったのか?まだ、若かった田中理沙の心は深く傷ついた。
ガサッ、ガサッ、ゴソッ、ゴソッ、今度は針葉樹林、森の中から聴こえる謎の音に、田中理沙は素早く反応をした。音の大きさからして何か、獲たいのしれない何かが接近して来ていた。
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