眼生え

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 いつものように前髪を立てる。もうキャップは必要ない。駐輪場に向かうと、彼女の姿をみつけた。後ろ姿に声をかけた。 「おはよう」  彼女は、前髪を作ったままだった。 「前髪、どうしたの? イメチェン?」  あれは夢、だったはず。でも、たまたま彼女は前髪を作っていた。やっぱり前髪がある方が、彼女はかわいい。 「は? 昨日と同じだし。でも、眼がなくなっちゃって」 「オレもなくなった!」 「でも、アンタは私の彼氏だからね?」 「マジで?」 「何? 私じゃ嫌なの?」  返事はしないまま、自転車を漕ぎ始めた。ちょっと待ってよ、と慌てて彼女がついてくる。 「嫌じゃねーよ! サイコーだよ!」  小さな頃に芽生えた恋心を温めているうちに、第三の眼が生えた。そのおかげで、恋が成就したのだから。
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