機嫌予報士

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 2026年9月、参議院選挙にて野党が大勝した。  大泉大臣の鶴のひと声が呼び水となり、有識者会議のメンバーは勿論のこと、まずは国会議員自らがKGYのスコアを持とうという論調が広がり、与野党の壁を越えて、国会議員はこぞってKGYのスコアを取得するのだった。  すると、これまで政策の違いで乱立していた野党が互いの考え方を尊重し合い、政党は一本化された。こうして二大政党として参議院選挙が行われる運びとなる。それ故、選挙の争点も明確となり、投票率も上がった。  結果、野党が大勝し、ねじれ国会となる。これまでであれば、いっそヤジが飛び交っていただろう。しかし国会からヤジが消えた。それもその筈、彼らはKGYのスコア保有者なのだから。KGYにおいて、ヤジなど論外である。  そんなある日、テレビを点けると、党首討論のダイジェストが流れていた。吉岡総理大臣と野党の党首である中川議員が消費税率の引き上げについての論戦だ。 「総理にお訊きします。消費税引き上げについて、何パーセントで、どの時期の施行をお考えですか?」 「税率は15パーセント、5年以内の施行を目指しております」 「それは素晴らしい。英断とも言えましょう。では、国民の皆さまにはどのようにしてご理解を賜るおつもりですか?」 「我が国の借金は膨れる一方です。次世代に社会保障制度を引き継ぐためにも財政健全化は必須です。国民の皆さまに負担を()いるのは遺憾ではございますが、子や孫、更には、まだ生まれていない子供の世代に、これ以上の借金を背負わせることはできません。ですから、痛みを伴うことは重々承知のうえ、私は誠心誠意、説明して参る所存です」 「では、経済への影響はどうお考えですか?」 「一時的に悪影響が出るでしょう。しかしながら、待ったなしの財政を鑑みると背に腹は代えられません」 「それならば、段階を踏んで引き上げるというのはどうでしょう」 「それは一理ありますな」  僕はテレビを消した。続きを見なくとも論戦の着地点が見えたからだ。KGY、いや、権藤氏の理念がここまで普及したことに僕は驚きを隠せなかった。  ちなみに、この翌年から小学校の道徳の授業でKGYが導入される。
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