最後の天使

2/2
前へ
/13ページ
次へ
 仁はその後熱を出したらしかった。仲間に運ばれ、医療部隊に保護され、それから記憶がない。  呼吸が楽になって気がつくと医務室だった。何日経ったかわからない。多分、既に解毒剤を投与されている。    額に絞ったタオルが置かれていた。彼はタオルを取って身体を起こす。早朝の時間帯なのか、室内も窓の外も、まだ暗い。  氷枕は意識の無い患者を夜間冷やし過ぎて危険だ。それはわかる。  ――冷感シートは?  仁が見回すと、そばのゴミ箱にシートの空き箱が捨ててあった。使い切った模様。  足元が重いと思ったら、近くの丸椅子に座った凪が、徹夜も出来ずにベッドに頭をもたせ、寝こけている様子。よだれまで垂らして幸せそう。  「うふふ、由美さんたら、そんなコトまでして、やだー……」  いかがわしい夢を見ているらしい。  「何で男のお前なんだよ」  仁は呆れて凪の頭を軽くペチンと叩いた。  色気のないラストになった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加