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私は被害者
「騙されたよ!」
「あーっ! ごめんなさい!」
2024年、ブルーフェニックス本部、第三部隊詰め所の朝。
窓からは秋の花が美しさを競っているのが見える。若手20代隊員、仁は、同世代の凪がゴミ箱を振りかざして走ってくるのを見た。
「手がすべりましたあ!」
仁に『騙された』被害者男性隊員、体格のいい中年、林田が、一瞬でゴミ箱をかぶる事になる。
すかさず凪が林田の胴を回し蹴り。「ごめんなさい、足も滑りました!」
林田は、頭からゴミ箱を取っりはらって、叫ぶ。
「覚えてろよ!」
そして形勢不利を判断したのか、詰め所から逃げ出した。
凪が、パンパンと両手をはらって見送った。
相変わらず細身長身、小悪魔的風貌。友の会と戦っている時は白蛇か毒婦の様に妖艶になるが、それ以外の時は、大型猫のワガママ赤ちゃんでしかない。多才なため、ブルーフェニックス、芸術部隊にも籍を持つ。
「全く、他部隊は油断も隙もないな」
「別にいいのに」
仁はどうってことない。片手の煎餅をポリポリと味わい、大袈裟だなと思っていた。
凪が呆れた様子で言った。
「お前もちった怒れ」
「慣れた」
凪は両手を腰にあて、大仰なため息をつく。
「それで?セルフカウンセリングできるのか」
「出来る」
「ならいいけどさ」
凪は言ってプイとそっぽを向くと、さっさと詰め所から出ていった。勤務態度が悪くてよく隊長に怒られている。
見送って仁は呟いた。
「やっぱり猫みたい」
後ろから、やはり同世代同僚の声がした。
「災難だったね。みんなで片付けよ」
友達思いの袴田マナ。仁は彼女に尋ねた。
「凪は」
マナが肩をすくめる。
「逃げちゃった」
「おいおい」
マナを筆頭に、第三部隊のみんなでゴミの後片付け。
「仁、気にすんなよ」
「ありがとう」
仲間の声が嬉しい。仁は笑った。
その時、パソコンの前のオペレーターが叫ぶ。「通報です」
巨体の壮年、雨風隊長がすぐ反応した。
「所在地と被害者」
「有田区大橋、真中由美」
「全員持ち場につけ」
仁の所属するブルーフェニックスは、武装福祉組織。マイナス憲法第5条にのっとり、国家権力に対抗できる力を有する。
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