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2020年11月27日(金)最期まであと5日
朝からMは絶好調だった。
日の光を浴びながら、何と、「おはよう」と喋ったのだ。
前回の血液検査の結果も改善傾向だし、Tは思わず妙なことを考えてしまった。
O先生の見立ては誤りだったのではないか、と。誤りは言い過ぎだろうが、二三カ月の誤差を含んでいる可能性はある。
Tはふと思った。今度、神父さんに会ったとき何と言おうか・・・・
危機的状況だから『聖油の秘蹟』を執り行ってもらったのに、二三カ月して、健やかにしていたら、それはTとしてはこの上なく嬉しいことなのだが、神父さんに対しては微妙だ。
「車椅子に移ってみようか?」
Tは唐突に提案した。
もう車椅子を使うこともないからレンタルを解除しようと思っていたのだが、上半身を三十度くらいまで立てても苦しそうにしないから、もしかすると、と思ったのだ。
さすがに、悪霊を見る目をするので今回は諦めたが、なぜか可能性を感じて、車椅子のレンタルを延長した。
もう必要ないと思って止めたストレッチも、ほんの少しだが、再開してみた。
この日はミルクティー味の栄養食品も、いつも以上にたくさん飲んでくれた。
食後に苦しんで戻すこともなかった。
Tは一度外したカレンダーを元の場所に掛け直した。
11月の頁を捲り、12月24日を大きな〇で囲み、2021年のカレンダーも封を切って、正月に大きな★マークを入れた。
どうしようか迷っていた入浴サービスも予約することにした。
スケジュール調整は難航したが、先週と同じ水曜日に何とか一枠を捻じ込んで貰えた。
この日は就寝前にもMとたくさん話ができた。
話したのはVIP旅行のことだ。燃えるような101の花火の写真を見せて「憶えてる?」と訊ねると、Mは嬉しそうな顔をした。
ハワイのバルコニーで語らう写真にはこの日一番嬉しそうな表情を見せた。
「夜遅くまでビーチで大騒ぎだったね。あのとき、色々な話をしたよな・・・・」
いつもはもうとっくに眠る時間なのに、Mは穏やかな表情でいつまでもじっと聴いていた。
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