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「そこにミネラルウォーターがあるだろ。喉乾いてたら飲んでいいぜ」
少女は言われた通りにボトルを取り上げた。しげしげと眺める。
「……麻薬入り?」
まったく、どこまでも意表を突く。男は騙して遣り込めることを諦めた。
「……いや。睡眠薬入りだ」
「そう。だったら飲むわ」
言うなり、少女が本当にボトルに口を付けたのだから驚いた。得体の知れない男と密室に二人きりで、しかも今まさにどこかへ運ばれようとしているというのに。こんな状況で眠ったら危険だと、誰だってわかりそうなものなのに。
とはいえ、実際は男が彼女に何かすることは絶対にない。彼はあくまで運び屋で、そもそもこんな娘ほど年の離れた少女に欲情する輩の気が知れなかった。
「相当喉が渇いていたんだな。それとも、単にアホなのか?」
「どっちでもない。起きていたって、退屈なだけだからよ。どうせもうしばらく着かないんでしょう」
少女は座席に横になり、腕枕に頭を乗せた。その目は相変わらず、男の後頭部を眺めている。
「どこに連れて行くの?」
「内緒」
「でも、あたし、売られるんでしょう?」
男は一瞬言葉を呑んだ。
「……ああ」
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