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少女がふたつめのあくびをする。やっと少し眠くなってきたようだ。仕切り越しの少女の声が、籠ってさらに聞き取りづらくなった。
「あたし、死のうと思ってたのよ」
男は黙ってハンドルを切る。
「強盗か通り魔か、なんでもいいから殺してくれないかなって」
「……本当に死のうとしている奴は、そんな風に語ったりしねぇよ」
「そうかもね」
少女がクスクスと笑った。
「ねえ? あたしが売られるのって、風俗?」
「娼館だ。変態オヤジどもがわんさか来る」
「高い?」
「処女ならな。そのあとは、お前の頑張り次第だろ」
「運び屋の給料は? 高い?」
「安い。はした金だよ」
男はまたバックミラーを見遣った。少女はだいぶ眠気が強くなっているのだろう、気持ちよさそうに目を閉じて、唇には穏やかな笑みすら浮かべている。やっぱり変な娘だ、と男は思った。
「ねえ、おじさん」
「オニイサンだ」
「お兄さん――」
少女は笑いながら言い直す。
「あたしが売られたらさ、あたしのヴァージン、買いに来て?」
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