87人が本棚に入れています
本棚に追加
***
処女の売り方について語る黒服の様子には、笑いも嫌悪も存在していなかった。男は、これから少女に対して為されるであろう非道な行為について、一切の感情を抱いていない。それは、まさしく少女たちを商品としか見ていない者の態度であった。
ルーカスは、自分も同じ側の人間だと思っていた。
「死神みたいなもんさ」
昔、ルーカスは自分の仕事について、誰かにそう語ったことがある。
いや、違ったかもしれない。誰かにそう言われたのだったか。それこそ彼が一番思い出したくない記憶だった。
嗚呼、それなのに。
なぜだが今日は思い出してしまう。
フロントガラスに映り込む街並み――そこに重なる、女の面影を。
そうだ。彼が先の台詞を言うよりも昔。もっとずっと昔のこと。
あの女が言ったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!