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「何見てんの?」
「適当にインスタ覗いてただけだよ」
それを聞いていたらしくて、あたしの隣でペン回しと同じ要領でスティックを器用に回す結衣先輩が不意打ちを食らわせに来た。
「違ったの? 彼氏くんとLINEしてんのかと思ってた」
「ち、違いますよっ!」
本当のことなのに何故か図星を突かれたような言い方になってしまった。
「えぇ、ホントかなぁ?」
「ほ、ほんとです! 遼くん、今頃教室で勉強してますよ」
「へぇ~、それで部活終わりに一緒に帰るんだ」
「ま、まぁ……」
「ふ~ん、そういうの良いなぁ。羨ましい」
あぁ~顔が熱い。今のあたし、絶対真っ赤な顔してるだろうなぁ……。
「こら結衣、あんまり後輩のこといじめないの」
織子先輩が子供に言い聞かせるような言い方をする。そうかと思ったら、今度はリイナ先輩まで「でもなんとなく分かるなぁ」と言い出した。
「胡桃ちゃんの反応すごくかわいいからついついからかいたくなる」
「何なんですか揃いも揃って……」
「彼氏くんのこと話題に出されたらすぐ顔真っ赤になるとことか特にそうだよ」
「うっ……もう、恥ずかしいからやめてくださいっ!」
ついに耐え切れなくなって、声が上擦ってるのも気にしないで自分のギターケースの方へ逃げる。ちょうどそろそろ弦を張り替えないといけなかったことを思い出した。それを口実にして結衣先輩より後ろに陣取る。四人いる先輩みんながいたずらっ子みたいにして笑っていた。
この軽音部の部員はあたしと由良を含めて六人。各学年二人ずつというやけに均等な人数比がなんだかおかしい。リイナ先輩と詩音先輩はそれぞれ部長と副部長を務める三年生、織子先輩と結衣先輩は二年生。もちろん軽音部だから全員何かしらの楽器は扱えるわけで、リイナ先輩とあたしはギター、詩音先輩はベース、織子先輩と由良がキーボードで、結衣先輩がドラム。あたしはギターボーカルで、リイナ先輩はギターの中でもリードギターって役割。あたしが入部した時点ではリイナ先輩がギターボーカルだったんだけど、その翌日の休憩中に何の気もなく「夜明けと蛍」を歌っていたら唐突にリイナ先輩が「これから私リードギターやる」と言い出したのだ。
その時から「胡桃ちゃんの歌声ってすごい綺麗だよね」って言われ続けてきている。その度に「絶対何かやってるでしょ」と訊かれるけれど、あたしとしては特に何か変わったことをしているわけじゃない。強いて言うなら時々インスタにいわゆる弾き語りの動画を投稿しているくらいだけど、それだって中学校を卒業した後から始めたから半年も経っていない。
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