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隔世遺伝なのか、イタリア人の祖母をもつ美咲は、瞳の色が薄い。
ヘーゼルといわれる色で、光の加減によっては金色にもグリーンにも見えたりする。
今でこそカラーコンタクトが流行っているから、そんなに目立つことはないが、子供の頃はよくいじめられたものだ。
中でも、ひときわ美咲に嫌がらせをしてきたのが、あの深山薫だった。
隣に住む、同い年の男の子。
いつも気持ち悪い虫や爬虫類の抜け殻を見せつけ、美咲はよく泣かされていた。
恐怖だった。大嫌いだった。
だから引っ越すと聞いた時には、薫の父と母には悪いが、ものすごく清々した。
しかし、トラウマも薄れた中学の頃。
隣の家にまた戻ってきた時には、目の前が暗くなった。
美咲が知らなかっただけで、薫の父が地方赴任の間、賃貸として貸し出していただけだったらしい。
当然、美咲は徹底的に薫を避けまくった。
幸い美咲は私立の中学に通っていたので、同じ学校に通うという悲劇は免れた。
朝早く出るため登校時間がかぶることもないし、出かける時には細心の注意を払う。
そうしてやり過ごしてきたのに。
高校の入学式で見かけた時は、何かの間違いだと思いたかった。
あの悪ガキだった薫が、生徒会に入るほど人望が厚く、品行方正な優等生だということも。
とにかく関わりたくないと思っているのに、先程のプリント然り、美咲が困っている時に限って薫と出くわしてしまうのだ。
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