死神

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死神

お前さん、死神を見たことがあるかい?と聞かれました。 私はいいえと嘘をつきました。 だれもそんなことをまにうけはしませんからね? 私はおかまいなしに言いました。お前さんそれはあんまり言わないほうがいいよ?だってさ、死神なんてこの世には存在しないんだからさ?そんなにないものをあるかの如くふるまっているのはどういうことなんだよ? それを聞いた彼はむっつりと黙り込んでしまいました。どうしたんでしょうか?何があったんでしょうか?私にはわかりません。 しかし、彼は続けて言いました。 お前さ死神を見たことがあるかい? おい!いい加減にしてくれよ!!お前さ!! と彼は答えました。 もううんざりしたのです。そんなもんいる訳がないだろう? お前何言ってんだよ?病気なんじゃないかい?!厳しく、咎めるように彼はいい加減しろと怒鳴りつけました。 それを聞いた相手はすっかり黙り込んでしまい、済まなかった…。 と謝りましたとさ。 それでまあその場は、お開きになったんでございますが、その後は怖かったんですよねえ? 彼は自宅に帰るとそこに死神がいるわけです。自分には視えているのです。その死神は、私に語りかけるわけですよ。 あなた空を見て御覧なさい、星が綺麗よ。何してるの? なんだ?こいつはまるで自分の妻か恋女房かのごときに、言うけったいなことを言う。見た目はまさに、あの恐ろしい悪魔の死神、見たなりのそのまま。しかし肝心な口調はまるで乙女のかのように、アンバランス。私に対して、語りかけるわけである。 よりによってこんな独身のところに一体何のメリットがあるのであろうか?彼は散々悩んだのであるが、除霊してもらう事にしようと、真面目な顔で、電信柱に貼り付けてある、いかがわしい、そのお寺へ出かけ、そして、そこにいる女住職にお祓いをお願いした。すると、その女は、目ん玉をまん丸くして答えるわけである。あのねあなたね?それはね、死神じゃなくてね?あなたの守り人ですよ? え?彼はびっくりとしたのである。なぜですか?と彼は尋ねた。 すると女住職はこともなげに答えた。お前さんさあ、最近さあ、その死神じゃないよ?その福の神ね、いやいや福の神というより守り人さんですか、偉く冷たいですねえ?偉く冷たいそぶりを見せてほっぽっているじゃありませんか?そんなことしてたら、泣きますぜ?泣きます。 いえいえ死神じゃなかったんだよ、いやそれは私の福の神だったんだ。しかし私にはそれがどうしてもあの鎌を携えた死神しか見えないので、ございます。なんでだろうなぜ、だろう?なぜなんですか?なぜ私はそういうふうにそんなおっかないものにしか見えないんでしょうかね?と私は住職に尋ねました。すると住職は答えたのでございます。お前さんさうん多分きっと前世の行いが悪かったんじゃないかい? そう言われましても、わたしには身に覚えがございません。なんなんだろうね一体どういうことなんだろうね?私はもう本当にわけがわからなくなったんです。自分の人生のことまで言われるともうさすがに頭がいっぱいいっぱいになってしまいまして、とりあえず、お開きにしようかと立ち上がったのでございます。 するとその女住職が答えたのです。お前さん、これからはさ、もう少し真面目に生きたほうがいいよ?あなたのしていることは結構ひどいことだ、女遊びのひどい。ほかの若い子たちになんか色目使ってさあ、何か何が、見えたのか、いや知らないが、いやいや見えてますが、あなたはそれで自分のそのなんですか?あれを?いえいえ言わせないでくださいよ?本当に…。仮に私は女でございますよ?髪は剃っておりますが、女でございますよ?そんな私にそんなことを言わせないでください。あなたはその彼女のことを多分、きっと蔑ろにしすぎたんですよ。内緒にしていたんですよ? 蔑ろにし過ぎたんですよ。その一言がズンと、重かった。 住職は間髪入れずに続ける。 あなたが本当は、ものすごいドスケベで肉付きのいいグラマラスな女性が好みで、 毎晩毎晩、夜なべをしているのはよく知ってますよ。そうやって、やってどんだけだしているんですか?ひどいですね?出し過ぎですよ?!いや見えてるんですよ?!私には全部ね?あんた、相当の変態だ。いやいやいや、床の軋む音まで聞こえますね?いやいや、あなたのなんですか?その…お母様ですか…。それがその…している、音が響くことを怯えてますよ…。やめてくださいねあんまり、お盛んなのはね? そこまで言われて私は思い当たる節が、確かに自分は、グラビアアイドルばかり考えている。それのコレクションをたくさんしてるんだ。しかしいくらいくら集めても、顔から下はナイスバディだ。しかし顔が違うだけでこんなにたくさん集めて一体何が楽しいんだろう…。こんなに必要かな?これはコレクションとか言い訳してたけど、いくらいくら集めてもキリがないじゃないか!なんなんだ?!?僕は!!!と彼は自分が見境なく写真のコレクションしているただのコレクターだったということに改めて、それだけの男に過ぎなかったと、気づいたのである。彼はそれをうちに帰りそのすごい形相で睨んでいる死神かのように見える女に向かい、すまなかったとわびた。それからである。死神はもう死神では、なかった。むしろ福の神であったかのようににっこりとした微笑みで彼を毎晩助けてくれたという。おしまい。
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