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今日の春馬の指先は、私を人生で一番綺麗にする魔法を使う。うなじから指をさしいれて、私のくせっ毛をくるりと巻き上げて、真珠のついたピンで差し止めていく。
大嫌いなくせっ毛も、春馬の指先にかかれば魔法にかけられたシンデレラみたいにキラキラと輝く。
「なぁ、真理亜、将来の夢思い出した?」
綺麗に魔法がかけられた私の髪の毛を、満足げに眺めながら、ドレス姿の私を、タキシード姿の春馬が意地悪く笑う。
「およめさん」
「遅いんだよ」
春馬が私をコツンと小突いた。
今日から春馬の隣にはずっと私がいて、私の隣には春馬がいる。
『結婚のススメ』の定義って、なんだろう。
ふとそんな馬鹿なことが頭をよぎって、すぐに私はかき消した。
だって、愛なんて、それ以上でもそれ以下でもなくて、いつも隣にいる愛する春馬そのものだから。
私達は今から鐘の鳴り響く教会で永遠の愛を誓う。それは愛する貴方の隣にいるための、ただの定義付け。
結婚式の準備で久しぶりに開いた幼稚園の卒園文集。
私はすっかり忘れていたのに、春馬はずっと覚えていてくれたことに気づいた。
春馬は自分の夢だけじゃなくて、ちゃんと私の夢も一緒に叶えてくれた。
少しだけ遠回りして、少しだけ余所見もしちゃったけれど、私の将来の夢は小さい頃描いた通りだった。
幼稚園の卒園文集、淡いベージュの表紙を捲った、8ページ目
きじま はるま 「まりあのびようし」
こうだ まりあ 「はるまのおよめさん」
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