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ーーーー次の日だったと思う。
私は黒板に文字を書く高橋先生の指先から目を離せなかった。左利きの先生の薬指に、見た事ないものが光ってたから。
クラスの誰かからツッコミが入る。
先生は照れながら、内緒にしてたんだけどな、昨日結婚式だったからと笑った。
教室のあちこちから冷やかしが飛び交う。笑い声に包まれた教室で、多分笑えなかったのは私だけだ。
後ろの席から春馬のつま先が、私の椅子裏をコンッと蹴った。
いつもはこんな事しない。
私はラインで返事する。
『ほっといて』
すぐにまた返事がくる。
『今日はキャンセルしとくな』
カットのことだ。
高校生になってからは閉店後、だれもいない美容室で、春馬が私の髪を切ってくれていたから。
恋がうまくいかないモヤモヤとした思いと、夢もなくて、空っぽの自分に腹が立ってイライラした。どうしようもないこんな自分を魔法みたいにあっという間に変えれたらどんなにいいだろう。
『いくから』
それだけ送った。春馬からの返事はなかった。
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