夕子と冒険

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 試験勉強の合間に、こっそりと計画を立てた。祖母は毎朝お堂で祈りをささげているため、その最中にこっそり帰ってまた出かけることが可能だ。最低限の荷物で鈍行を乗り継いで東京に向かえば比較的安価に東京へ行ける。最近ライトは小町と外で遊んでいることが多いので、祖母はライトに友達ができたと思っている。そのため「友達の家に泊まります」と連絡すれば、警察に捜索されることもない。  試験前日、ライトは荷造りをしていた。お気に入りの洋服に、ありったけのお小遣い、非常食、一眼レフカメラ、サインしてもらうためのものや、万が一の際に備えた諸々。出来れば使いたくはないし、使わなくていいと信じたいもの。  秘密の二人旅は信じられないくらいスムーズに進んだ。祖母に見つかることもなく駅まで行けて電車に乗れた。車窓からたくさんの写真を撮った。 乗り継ぎで戸惑った際、人見知りゆえ駅員になかなか電車をうまく聞き出すことができず困ったが、結果的にはライトの小さな声を駅員が聞き取って教えてくれて事なきを得た。  東京に着いた頃には夜になっていた。秋田にはないようなネオン街に驚いた。電車に乗って、明日のサイン会が行われる秋葉原へ向かう。晩御飯は夜遅くまでやっていたカフェに入った。見たこともないようなおしゃれなメニューの写真を撮ったが、東京にいるのが見つかると大ごとなので、SNSへの投稿は帰ってからにすることにした。その後は24時間営業のマクドナルドで仮眠をとった。  そして、運命の朝。ライトはサイン会の会場に向かった。そして、会場に高遠結花がやってくる。朝一番に並んでいたライトはかなり間近で結花を見ることができた。ライトは夢にまで見た生の結花の姿に感動している。  結花が挨拶をしようとしたその時、結花の頭上にある会場の照明が音を立てて壊れた。結花をめがけて、照明が落ちてくる。  ライトは考えるより先に体が動いていた。勢いをつけて結花に体当たりをし、数メートル先に二人で倒れこむ。結花がさっきまでいたところに、重い照明が落ちていた。 「死ね、静月の血はここで絶やす」  小町の全身からはとてつもなく黒い妖気が放たれていた。
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