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ライトは鞄からお札を取り出して、小町に向かって投げつけた。封印するだけの力はない。3日ほど小町の動きを封じる程度の代物だ。本当はこんなものは使いたくなかった。小町を信じたかった。
「見習いイタコ! 何をする! 誰がここまで連れてきたと思っている!丈夫な体を持っているくせに、私がいなければ田舎の片隅で男に虐げられているだけだったお前を、東京まで連れてきてやった恩を忘れたのか!」
「最初から、このつもりだったの……? 結花ちゃんを殺すために、あたしのことを利用したの?」
授業中に筆談したこと、2人で寄り道をしたこと、秘密の場所で過去を打ち明けたこと、共に過ごした日々が頭に浮かんでは消える。生まれて初めての友達との思い出。そのすべてが幻や偽りだったとは思いたくなかった。
「ははっ……確かに、私は今イタコに憑いているからイタコからそう遠くは離れられない。お前を東京に連れてくる必要はあったさ。騙されたとでも言いたいのか? 全部私のせいか? ここに来るのにお前の意思は一切介在しなかったというのか?お前の望みじゃなかったのか?」
「ひどいよ。信じてたのに」
「よくそんなことが言えたな。白々しい。信じていないからこんなものを持ってきて今私の動きを封じているんだろう?」
ライトは図星をつかれ何も言えなくなる。弁解しようとしても声がうまく出なかった。
「結局、イタコには自分というものが無いんだ。私を疑ったのは祖母が危険な妖怪だと言ったから。芸能界を目指すのはこの女が好きだから。確かに私はイタコの感性が好きだ。だが、感性だけで生きていけるとでも思ったか? そんな女は騙されて捨てられてすべてを奪われるんだ。憎き高遠静月に、小説を盗作された私のようにな!」
作品は我が子、と小町が言っていたことを思い出した。我が子のような作品を奪われた復讐として、高遠静月の血を絶やす。それが小町の目的だった。
「なるほど、やっぱり私、生まれてきちゃいけなかったんですね」
何も言えなくなったライトの代わりに結花が言う。希死念慮をあらわにする結花と、殺意を剥き出しにする小町が同じ場所にいるのはどう考えても危険だ。ライトは小町を置いて、いったん結花を連れてその場を離れることにした。
「ごめん小町! 必ず戻ってくるから! ちょっと頭冷やしてよ!」
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