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夕子と文豪
翌朝、ライトが目覚めると隣には体を丸めた猫又が眠っていた。ライトは昨日の出来事が夢でなかったと実感する。ライトが起き上がった振動で小町もゆっくりと目を開ける。
「ああ、起きていたのか見習いイタコ。早速だが、私は学校に行ってみたいのだが」
「いいけど、そんなにいいもんじゃないですよ……」
「そうなのか。私は病気でほとんど尋常小学校には行けなかったんだ」
遠い目をして小町は語った。
「もともと長くは生きられないと言われていたけれど、最終的には労咳で死んだ。碌な人生ではなかった。あまり生前の話はしたくないな。忘れてくれ」
「ごめんなさい」
配慮に欠いた発言をライトは謝罪したが小町は気にしていない様子だ。カーテンを開けて日光を浴びると気持ちよさそうに伸びをした。
ライトが教室に入ると意地悪なクラスメイト何人かがひそひそ話を始めた。当然、小町の姿はほかの生徒には見えていない。陰口の内容は奇妙な存在が憑いていることではなく、主に昨日の喧嘩とそれに伴うSNS投稿についてである。
「何だ、見習いイタコ。お前、嫌われてるのか?」
「……いいもん。川井夕子に友達がいなくたって。トワイライトにはファンがいるもん」
たまにカッとなって男子に言い返すことはあるが、普段は気が弱いライトは言い返すことはない。リアルに友達がいないライトの支えはたった数人のインスタのフォロワーだった。
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