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祖母には晩御飯は外で食べると連絡していたので、食事処へと向かう。小町は現代の娯楽文化を楽しんだ後は、現代の食文化に興味津々だ。
「見習いイタコは喫茶店が好きなんだろう? 美味い店をたくさん知っているだろうから期待しているぞ」
「うん、でもね、カフェじゃないんだけどすごく美味しいお店があるの」
インスタグラムには投稿していないが、ライトにはお気に入りのお店がある。それは小さな焼きそば屋だった。入店すると隅のテーブル席について、横手焼きそばを頼んだ。まだ夕方の早めの時間なので先客はいなかった。
「ここの写真は撮らないのか?」
「うん。秋田の人間ってばれちゃうから。いただきます」
ライトは手を合わせると、目玉焼きを崩して幸せそうに焼きそばを頬張った。
「やっぱりここの焼きそばが世界で一番おいしい」
「そうか、じゃあ私にも一口くれないか?」
店員の目を盗んで、こっそりと小町に一口分ける。
「ははっ……これはあの時代にはなかった味だな。確かに美味だ。どうやらお前の感性はかなり私に近いようだ」
「ほんと? あたし、ずっと変って言われてきたから……」
「さっき飲んだ飲み物も悪くはなかったし、味覚はおかしくはないだろう。ただ、べびたぴ? だったか? よくわからない言葉を発していたイタコよりは今の自然体のイタコの方が好きだ」
たった1日の道草だった。けれども、この1日は2人の中で大きなものになっていた。
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