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Secret STYLE
「っあ~! 美味しい!!」
私……辻 彩乃は馴染みのバーで仕事終わりの一杯を豪快にあおっていた。
ほぼ毎週金曜日の夜、私は仕事帰りにこのバーに寄るのが日課になっていた。
こんな事云ったらマスターに怒られそうだけど、金曜の夜だと云うのに客足の少ないこの店は、疲れた体を静かに癒すには最高の場所だった。
「マスター! おかわりぃ!!」
「彩乃ちゃん、今日はペース早いねぇ? 何かあったの?」
「フフフ~」
顔馴染みになっている私に、マスターは少し呆れ顔でそう云ってお代わりを私のコースターの上に置いてくれた。
私は曖昧に笑って、今度は味わうようにグラスの中身をゆっくりと口に含む。
“何かあった?” ……確かにあった。
それも、とっても喜ばしい事が。
私は新薬を開発するオリエンタル製薬会社に勤めている。
それなりに大手で、その業界でも結構名の知れた会社なのだ。
勤務して3年目にして、ようやく念願の新薬開発プロジェクトチームに配属され今日がちょうど1年目。
プラス、ようやく私のチームが開発した新薬が陽の目を見ようとしていたのだ。
今日の乾杯はそのお祝い。
ちょっと気が早いかもだし、独りだけど……いいんだ!
私は2杯目のグラスの中身を、ぐいっと喉の奥に流し込んだ。
その時……
「何か、イイコトあったんですか?」
急に耳に飛び込んできた、少し掠れたロートーンボイス。
そして、低くて、でもどこか優しさを含んだその声の主を探しに振り返った私は唖然とした。
だって、そこに居たのはスラッと背の高い、モデル並みのスタイルをした男性だった。
くりっとしたアーモンドアイは緩くカーブを描き、唇は優しく微笑みを浮かべている。
ふわふわとした栗色の髪、顔も小さく脚も長くて8……いや、9等身はあるんじゃないかと思うくらい長身!
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