Secret STYLE

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そこには、ニコニコ顔の彼がカウンターに片手で頬杖を突きながらこっちを見つめていた。 「あ、あの……」 「あ、ごめん。自己紹介がまだだったよね? ボクは高坂……高坂 守(こうさか まもる)。守って呼んでくれたら嬉しいな」 「守……さん……?」 「うん?」 復唱すれば、目の前の彼……守さんは嬉しそうに目を三日月にしてくしゃっと笑う。 瞬間、ドキン! と心臓が跳ね上がったのは云うまでもないだろう。 「あ、私……辻 彩乃です」 「彩乃ちゃん……か」 ペコリと頭を下げれば、守さんが私の名前を復唱する。 その声が余りにも甘くて、私は更に心臓を跳ね上がらせてしまう。 しかも、見ず知らずの……初対面のこんなイケメンに“ちゃん”付けされるなんて……今日はなんだかイイコトづくしだ。 「……で、彩乃ちゃんは何かイイコトでもあったのかな?」 「え!?」 一瞬、私の心の中を読んだの!? なんて思ってしまうくらいドンピシャな質問をしてきた守さんに、私は思わずグラスを落としそうになった。 私の驚いた仕草に、守さんの表情がビックリしたものに変わる。 「あ、すみません。何か……心の中を読まれたのかと思って」 「え? ……あ、はは。彩乃ちゃんって面白いね。実はね、彩乃ちゃんがここに座る前から向こう側で独りで飲んでたんだ」 「は、はぁ……」 私の言葉に驚き、一瞬見開かれていた守さんの両目だったけど、次の瞬間には本気で楽しそうなソレに変わる。 守さんの言葉に、私は曖昧に返事を返すしかなかった。 「でね、“あ、カワイイ子が来たな”って思ったら、すごく楽しそうな顔で飲みだしたからさ?」 「か、カワイイって……」 お世辞だって分かっていても、こんなイケメンに褒められて照れずにいられるなら、その方法を教えてほしいくらいだ。 私は恥ずかしさを隠すように、グラスの中の透明な液体を口に含んだ。
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