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「ボクにも、その楽しい時間を共有させてほしいなって思ったんだよね」
「そ、そうなんですね……」
どう返していいものか分からず、私はまたも曖昧に返事を返す。
「彩乃ちゃんはよくココに来るの?」
「え?」
「あ、なんかマスターと顔馴染みっぽかったからさ」
「あ……そうですね。よくココには……」
「金曜のその席は彩乃ちゃんのものだよね?」
「マ、マスター!?」
云い淀む私に、グラスを拭いていたマスターが素知らぬ顔して余計なアシストをしてくる。
(それじゃあ、金曜によく来る寂しい女って思われちゃうじゃん!?)
「へぇ? 毎週金曜に来るの?」
「あ、いえ……毎週って事はないんですけど……」
「“ほぼ”毎週、だよね?」
「マスター!!」
やっぱり勘違いしていた守さんの言葉に私はフォローを入れるけど、またもマスターが悪アシストを入れてくる。
(ヤメテよ~! こんなイケメンの前でっ!!)
「でも……イイよね、このお店。雰囲気もあったかくて……ボクは初めて来たんだけど」
「そうなんですね?」
「こんな雰囲気のお店で、『マスター、いつもの』って云ってみたいよね?」
茶目っ気たっぷりにそう云って、守さんはジョークでマスターに向かって片手をあげて見せる。
マスターは口許に笑みを浮かべていた。
私もいつの間にか笑みがこぼれていた。
不思議な守さんの雰囲気……初対面の筈なのに、スッと心の中に入ってきていつの間にか自分の居場所を作ってる。
しかも相手に警戒心を植え付ける事もなく……守さんの人柄なのかな? と、優しい彼の横顔を見つめながら私はそう思ってた。
「ん? 何かボクの顔についてる?」
「あ、いえ! あの……守さんって何をされてらっしゃる方なんですか?」
不意に向けられた視線と柔らかい笑顔に、私は焦りとドギマギを隠す為に早口で別の話題を振った。
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