Secret STYLE

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第Ⅲ相試験(フェーズⅢ)と呼ばれる、実際の医療現場における使用を想定した実験結果のデータを提出する今日、香野さんと雅人が提出に向かっていた。 「おいっ!」 「イタッ!?」 私の後頭部に感じた鈍い痛み。 キッ! と背後を振り向けば、書類を丸めた物を手にした呆れ顔の雅人が立っていた。 「何よ、雅人!? 香野さんと出てたんじゃなかったの?」 「今帰って来たんや。今回の新薬の進行状況を先方に報告して来いって」 「報告? 何で私が? MR(医薬情報を医療関係者に提供する、いわば製薬企業の営業担当者)に任せれば……」 「草野医院の院長直々のご指名らしいけど?」 面倒くさがる私に、雅人はため息をつきながらそう云った。 草野医院は、この地域では1・2位を争うくらいの大手総合病院。 そこの院長は何かと私を……私のチームを懇意にしてくれているのだ。 なので、草野医院だけはMRではなく、暗黙の了解で開発者の筈の私やチームの誰かが行く事になっていた。 「草野医院長の直々なら仕方ない……か」 私は雅人に叩かれた後頭部をさすりながら、小さなため息をついた。 院長に会う事自体は苦じゃないし、お世話にもなってるから……と、私は顔見せ的な軽い感じでいた。 この後に待っている大波乱なんて、この時の私には予想すらできなかったんだ……
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