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濡れて額に張り付いた守さんの前髪から、ポタポタと水滴が滴り傘を持つ私の手を濡らしてゆく……
守さんは私の手からスッと傘をスッと取り上げると、私が濡れないように傘を傾けてくれる。
そして少し腰を折ると、髪と同じように濡れた瞳で妖艶な笑みを浮かべて顔を近づけてきた。
一瞬、キスされるのかと思ったけど、鼻先が触れそうな距離で守さんの顔は止まり私たちは見つめ合う。
「憎んでくれてもいい。だけど、もしボクにチャンスがあるのなら……話だけでも聞いてくれないかな……?」
そう云って少し儚げに笑った守さんは、空いている片手で私の髪を一房手に取ると恭しく唇を寄せる。
まるでドラマのようで恥ずかしくなるような行為なのに、守さんの瞳に見つめられると心臓が勝手に高鳴り始める。
あんなにも避けていたのが嘘のように、私の心は再び守さんに囚われてしまった気がした。
守さんの存在自体が魔性なんじゃないか……なんて錯覚すらしてしまう。
私が守さんの言葉にコクンと1つ頷けば、守さんはホッと安堵した柔らかい笑みを浮かべた。
そして「ありがとう」の言葉と共に、私の頬に降ってきた彼からのキス。
チュッと軽い音を鳴らして彼の唇は私の頬から離れる。
瞬間、守さんが触れた部分からじんわりと熱を帯びていくような感覚に陥った……
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